1.割付(わりつけ)→目印をマーカーで書く。 2.粗ずり(あらずり)→粗く削る。 3.石掛け(いしかけ)→表面きめ細かく削る。 4.磨き(みがき)→光沢を出す。 |
素材自体に個体差があるガラス職人さんが人間の手で作っている物なので、個体によって色が濃い物や薄い物の微妙な差異があります。 色被せが濃い生地が適している製品、色被せが薄い生地が適している製品も存在します。 それも含めてこの時点で仕分けをしておきます。 |
デザインを考える時間1つのデザインを考えるのにも相当の時間が必要です。 1日8時間くらいでデザインが完成することもあれば、1週間悩んでも納得いかずノックアウトされて床に倒れて放棄しかけることもあります。 現在、当工房では日本トップクラスの製品が存在し、その各々について相当のデザインの時間を費やしてきました。 累計どれくらいの時間がかかったかは怖いので振り返らないことにしています。 現状製品の数は1つの切子の工房が持つ製品数で考えたら全国的にも類を見ないほどかなり多い方かと思います。 一般的に過去にカットしたデザインを職人が順に忘れていくので、同じカットをできなくなる現象があり、それが原因で1つの工房内で持てるデザインの数の上限が決まってくるような状態です。 私が現在1人で150種類以上の作品を「いつでも」作れると言ったら、度肝を抜かれる他の職人さんもいるのではないでしょうか。 当工房の強みでもあるので、今後さらにこの強い部分は200、300・・・と誰にも追いつけないくらい人生の許す限り、はるか遠くまで際限なく伸ばしていこうかと考えております。 お気に入りのデザインがきっとみつかるかと思います。 製品一覧 |
デザインの方向性は数学的「グラスの形状から逆算してデザインを考える」という手法は手間がかかり、大変です。 職人の中でももしかしたら私だけがやっているデザイン方法かもわかりません。 一般的には「こういうデザインを入れよう」という感じで、ガラスに直接好きな絵を書いていきます。 ※例えば、思いつきやすいところで言えば、富士山、ハート、魚、葉っぱ、桜。 その絵に合わせて割付の線の位置を決めていくという感じです。 多分そのデザイン方法の方が手間がかからないので一般的かと思います。 しかし、傑作を産み出したと自分で感じる場合は前者のように最初に全てを計算してから製作にとりかかった場合の方が圧倒的に多いです。 何かをモチーフにしているわけではなく、数学的な曲線と直線の美しさ的なところがあります。 上のような大枠のデザインに優れたものが完成した時は嬉しいですね。 【傑作】種子ショットグラス 製品ページで作品をみてもらえればわかりますが、桜だとか魚だとか明らかにその形状を削った作品はありません。 方針として切子の美しさは数学的な構造の中にあるのではないかと推定しながら製作しております。 しかし、私はみなさんがイメージするような頑固な職人ではありません。 自分が考える世界の外側のものが案外良く感じたり、年数が経過して感じ方が変わったりなど往々にしてあります。 出来るだけ広い視野で色んなデザインに取り組んでいます。 例えば、上の理論にとらわれないアート的、感覚的、女性的なデザインも作っています。 ストリームタンブラー 芸術ロックグラス 江戸切子の伝統的な手法の中に何かのモチーフを削る「花切子(はなぎりこ)」という分野も存在します。 修業時代の先輩が金魚の花切子をしておりましたが、絵を書くのが下手な私では多分一生できないことだなと思いました。 職人の作るデザインにはそれぞれ長所があると思います。 そこには多様性があり、消費者からすれば選択肢が増えることなのでとても良いことだと思います。 私の作品の個性、長所、強みとして、数学的な部分をベースキャンプにして作品作りをしたいと考えています。 |
削るときにグラスを持ちますが、みなさんが普段コップを手に持つくらいの力で持って回転している刃に当てます。 初心者は指先だけで持つとやりやすいと思います。 グラスを刃に押し当てる力は、私の体感だとみなさんが普段ハンコを押すときにグッと少し力を入れて押すくらいの力に近い気がします。 刃に当てるときにビビッてフワッとした力で当てるとカット面がぶれます。 緊張しても少し力を入れてグラスを刃に押し当てるとといいでしょう。 外側からライトを当てて光を透かして、グラスの内側を見ながら削ります。 回転している円形の刃に押し当てて、刃の弧の部分がグラスに食い込むことで削れます。 カットしたら貫通しないか不安かと思いますが、切子や江戸切子のガラスは若干厚みがありますので、貫通することはまず無いと思います。 特に底の方はガラスの厚みがかなりありますので、結構深掘りにしても貫通しません。 本当に100%近く貫通しないと思いますが、万が一貫通した際も「バリーン!」と割れるわけではなく、「シュルシュル」と小さい音で貫通部だけポロポロ取れていく感じなので、けがをする心配は無いです。 |
カットは以下の順に難易度が高くなっています。 底のカット、ペーパーウェイト等の平面に対するカット(やさしい) ↓ 縦のカット(やさしめ、ガイドの線が必要) ↓ 斜めのカット、Y=Xのカット(かなり難しい) ↓ 横線のカット(激ムズ、初見ではほぼ無理) という感じです。 縦に近いほど簡単なので、Y=XよりかはY=2Xの方が縦に近くて簡単という理論です。 Y=1/2Xも非常に難しいのでやらない方がいいです。 自分でデザインを考えるときも縦線寄りのデザインを考えてから江戸切子体験に臨んだ方が良いです。 難易度の低い物からカットしていくとコツを掴めると思うので、まずは底から削ると良いです。 これはペーパーウェイトに伝統的な文様である16枚の葉を持つ菊をカットした作品です。 切子職人的には基礎中の基礎というカットで、最も簡単なカットの部類ですが、初心者が初見で16枚の葉を削ることはまず不可能です。 これの半分の8枚の葉の底菊を削るのが良いかと思います。 まずは十字にカットし、そのあとに中間をY=Xが通るようにカットすれば8枚の葉を持つ底菊の完成です。 注意点は以下の通りです。 縦のカットは比較的簡単ですが、下の写真のようにマーカーで正確な縦の線のラインが無いと左右にブレがちです。 プロの世界では正確に縦にマーカーをかける道具を使用しますが、正確に書くには道具の訓練(修業)が必要なので、切子体験では使用することができません。 もし、縦の線をカットしたいと思ったら目見当で丁寧に手書きで縦のガイドラインを書くと良いです。 ただし、丁寧にガイドラインを30分くらい書きすぎてカットする時間が1時間くらいしか取れなかったとなっては本末転倒です。 江戸切子体験は基本予約で埋まっており、次のお客さんが待っているので、カットの時間が足らないからと言って延長してカットすることができません。 時間配分をよく考えてテキパキとカットを入れていくことを心がけると良いです。 体験に行く前にある程度自分の中でカットしたいデザインを考えておくとグラスにマーカーで悩みながら書く時間が減って、カット体験の時間が多く取れます。 |
初心者は下の黒丸のいわゆる「星(ほし)」を削るデザインがわりとできるかもしれません。 むしろ多分それを体験の指導する人にもおすすめされると思います。 刃を定点で当てて、直線距離が少しずつ広がっていく感じで削ることができます。 縦線でも斜め線でも横線でも、グラスを回転させて動かしながらカットするのが初見では非常に難しいです。 グラスを動かさず、刃に押し当てるだけで上の星は作れるので、比較的作りやすいです。 また上の星の場合でも底のカットと同じように縦→横→斜めの順にカットすると削りやすいと思います。 先ほど見せたぐるりと一周長い横線で削るような輪っかのカットは激ムズで、ミスってぐちゃぐちゃになると思うので、絶対にやらない方が良いです。 あとは、何かをモチーフにしたデザイン(富士山、葉っぱ、桜など)は多分非常にぐちゃぐちゃになるのでやらない方がいいかなと思います。 先ほど見せた縦線ベースの作品でもデザインとしては完成されています。 等間隔で均等にカットを入れると見栄えが良くなるので覚えておいてください。 カットする難しさを知りたいという人はガイドラインとか書かずに時間目いっぱい色々削ってみると良いと思いますが、少しでも良い物を作りたいという人は上の内容を把握しておくと幾分良い物が出来るかと思います。 |
良いものを作って誰かに贈り物にしたいと思っても多分難しいと思います。 それを期待して江戸切子体験に行くとガッカリしちゃうかもしれません。 江戸切子体験で削ったグラスは自分で使うものとして考えた方がいいかもしれません。 江戸切子体験の値段に少しプラスのお金で当工房の場合、このようなロックグラスが購入できます。 別のページにも書いてありますが、私がアマチュア時代に趣味で4年間江戸切子教室に通っていましたが、累計作業時間244時間、かかった金額は50万円です。 アマチュアでそれくらいの時間とコストをかけてようやく人にプレゼントできるかな?くらいの物が作れるようになります。 自分でやろうとすると50万円、プロに任せるとそれを1万円以下で買えるので贈り物を考えている場合は素直にプロの物を購入して贈った方が「時間と労力、コスト、仕上がり」が良いと思います。 |
線の量を減らすマーカーを引いたものは以下のようになります。 基本は縦横の線だけです。 カットが複雑で混乱するデザインのものは、斜めの線も書いておきます。 線を書く作業時間が増えるとだんだん採算が取れなくなってくるシビアな世界です。 出来るだけ斜め線を書くという作業は減らすように努めます。 例えば、斜めの線を増やして1個の割付の時間が2分増えたとしましょう。 これを何ヶ月かで200個作って下さいという状況になったら、たったの2分だと思っていたものが累計6時間40分のロスになったりします。 こういうロスが積み重なると年間で何日単位で作業が遅れてくるという状況になるわけです。 切子作家のように1つのものに際限なく時間をかけて作品を作る場合はこの話は関係ありません。 |
割付=グラフを書く「ガラスの表面に縦横の線を引き、座標となる目印を決める」というものです。 感覚的には数学のグラフを作るのと同じことをやっています。 例として、以下の数学のグラフをご覧ください。 上のグラフは
4つの数式でなんとなく模様になっていると思います。 切子はこれをガラスの上でやるために、縦横に線を引いています。 それが割付という作業です。 |
表面積に合わせて調整ガラスの形状ごとに表面積の大きさは全く違います。 私はキャンパスの大きさと呼んでいます。 同じようなデザインでも展開図を書いた時のキャンパスの広さが全く違います。 紙の上で二次元で計算したものが、すんなり入るかと言えば入らなくて困ってしまう場合が多いです。 実際に書きながらデザインを調整していきます。 例えば、「降光(こうこう)」という光が降り注ぐ様子をイメージした複雑に違う角度の線が入り組んだ型があります。 【傑作】降光ロックグラス 【傑作】降光タンブラー デザインが緻密に計算されています。 ロックグラスで先にデザインしましたが、タンブラーに流用できず、最初からデザインし直しました。 コップ状の計上のものは口元が広く、底の方がすぼまっています。 1ミリずつ調整しながらベストなデザインになるように、かなり精密な調整の割付けを行っています。 個別の作品ページにはこういった製作過程、製作秘話も載せていますので読み物として楽しんでいってください。 |
見えない場合「勘」で削る二重構造のガラスの素材はガラス職人さんが作っているものなので色が濃いものもあり、差異があります。 割付の線がほぼ見えなくなることもあり、その場合は「勘」で削ります。 それでも問題なく削れるのは今までの過去に練習してきた自分が居たからだと思います。 カット時の手首のひねり具合で大体どれくらい削れているのか予測します。 何千回も同じカットをした自分の手の感覚を信じて削ります。 ガラスの表面に書いた2mm幅のマーカーの線も仕上げのカットをする際には太すぎます。 マーカーの線は目安程度にし、最後の1mm以下の細かい調整も職人の勘で削っております。 |
場所により太さを調整うっすら削って目印をつけるだけの筋を入れるという場合もあります。 しかし基本的にはかなり多めに削り大体の形をこの時点で作ります。 底から伸びる太いカットとは違い、側面の繊細な調整が必要な部分は筋を入れるだけにとどめています。 粗ずりをしっかりやっておかないと仕上げで削る時間が尋常じゃなく増えます。 採算が取れなくなって廃業してしまうので、しっかり削っておく必要があります。 |
石掛け=光沢が出る工房によってはカットの最終工程に石掛けを行わない工房もあります。 当工房では石を掛けた方が最終的に磨いた時の光沢が綺麗になると考えております。 伝統的な作業方法でもあるので先人の知恵を大切にし、石掛けを行って仕上げております。 |
1mm以下の世界仕上げでカットの全てが決まるので、慎重に削っていきます。 1ミリ単位以下での精度が必要になってきます。 とにかく私はよく目視をします。 感覚的には大体0.5mm程度の誤差内で調整できれば綺麗に見えるという感覚があります。 色被せによって、実際にカットして見えている範囲とカットし終わった後に実際に削れている範囲が違います。 色被せの濃さによってその差異が変わります。 色が濃いなら内側から見てだいぶ手前でカットを止めないと外側から見た時にカットが食い合ってしまいます。 そこらへんは職人の勘でカットの長さを調整していきます。 |
工芸品に共通する「味」色被せの厚みによってカット面が全く見えない部分を職人の感覚で削って調整しているものです、 なので、多少の寸法の誤差(とはいえ1mm以下程度)が発生する場合もあります。 切子が手作業で作られているという「味」の部分になってきます。 個々の製品によって素材の色の濃さも違えば、カットの微妙な調整も違います。 全ての製品が同じではないという点も含めて工芸品を楽しむものだという風潮がありますのでご理解頂ければと思います。 私自身も20歳からの趣味で全国の工芸品集めをしております。 全47都道府県に行きました。上はコレクションの一部です。 |
手磨きの技術現在は少数派になっている「手磨き」という技術を大切にして当工房では生産しております。 1個ずつ、1か所ずつ丁寧に磨いていきます。 一般的には「酸磨き」というたくさんの数を一気に仕上げる製法が選択され、それに比べて非常に時間がかかりますし、機材の費用も多くかかります。 写真の通り、カットの線を1本ずつ磨いていきます。 カット技術に加えて手磨きの技術も工房ごとに大きなレベルの違いがあり、工房ごとの技術力が出来上がりのクオリティに直結します。 概ね手磨きを行っている江戸切子の職人は他の工房の総合的なレベルを見る時はカット技術よりも「磨き」の方を見るのではないでしょうか。 酸磨きに比べると非常に生産性が悪いですが、ガラスの強度が保たれて出来上がった時の品質が良いです。 修業時代に師匠に「手磨きの技術は大切にした方がいいよ」とよく言われたもので、当工房では修業時代に引き続き、手磨きによる磨きを選択しております。 カットしていない色被せ部分の色が落ちず、強度も保たれます。 ユーザーにとっては良いこと尽くしかと思います。 今では多くの工房や切子作家が酸磨きをしており、今後も酸磨きの切子が増えていくかと推測しています。 |
値段を抑える取り組み手磨きによるコスト増加分によって値段が大幅に上がらないように、
別の工房にお伺いする機会がありましたが、そこのトップの人に当工房の切子の値段を見せたら「このカットでその値段は安いね」とボソッとひと言おっしゃってました。 製品一覧 どの工房がどういうものを作ってどの値段で販売するかは自由で、私達がどういうものをいくらで購入するかも自由です。 ただ色んなことを知った上で、みなさんにとってより良い選択ができることを願っております。 |
日本トップクラスの磨き磨きは日本でも最上位クラスかと思います。 なので、金額だけでなく、品質の高さについても驚いて欲しいなぁと思います。 ぜひ日本トップクラスの磨きを体感してください。 上からのぞいた時。 底の形状。 これで完成です。 |
磨きの品質=ブランド磨きの根底が崩れることは、当工房のブランドの崩壊を意味します。 磨きの品質を維持することに関しては気が気ではありません。 磨けていないものを見ても一般の人にはわかりませんが、それを見た後に、本当に磨けているものを見た時は一般の人にも品質の高さに気付くと思います。 多人数で働く江戸切子の工房では、検品作業は一般的に新人に任せたりする場合も多いです。 しかし、当工房では実際に下積みで「磨き」を何年も行ってきた自分自身の目で検品することを大事にしています。 |
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